研究概要 |
1. 臨床的検討 平成9年度の研究を拡大し、当科に受診した単純性肥満児と若年性糖尿病患児を対象として脂質系パラメーターと共にantithrombin III,thrombin-antithrombinIII complex,von Willebrand factor,tissue plasminogen activator(tPA),plasminogen activator inhibitor 1(PAI-1),tPA・PAI-1 complex,α_2 plasminogen inhibitor,plasminogen,thrombomodulinを測定し、遠隔期にある川崎病罹患児と比較した。その結果、川崎病、単純性肥満、若年性糖尿病のいずれにおいてもPAI-1のみが有意に高値を示したが、単純性肥満と若年性糖尿病では、川崎病と比べてもさらに高値を示した。なお、心エコー上、測定時点では明かな冠動脈病変を認めない川崎病罹患者での検討では、罹患後5年以内では一過性冠動脈病変の既往の有無はPAI-1に影響を及ぼさなかった。しかし、5年以降の川崎病罹患児では、一過性冠動脈病変の既往のある例でPAI-1がさらに高値であった。 2. 基礎的検討 昨年に引き続き、血栓症易発症ラットとWister-Kyotoラット(対照)を用い、各年齢群または同一個体の各年齢段階でLPSを投与し、血栓症易発症ラットで加齢に伴いmRNAの発現が増加する機序を検討中である。さらに、血管内皮細胞の加齢に伴う抗血栓機能の低下をアデノシンが抑制する予備的結果が得られたので、接触分子を介したアデノシンの作用機序について検討を進めている。
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