研究概要 |
研究代表者は,Clq固相法によってSLE血清中に検出されるClq結合性物質が免疫複合体ではなくC1qコラーゲン部に対する自己抗体であり,しかもこの自己抗体がClqを介して腎糸球体に沈着することをこれまでに明らかにしてきた。また,代表的なループスマウスでありClq結合活性が高値を示すMRL-lpr/lpr(MRL/l)マウスにおけるClq結合性LgGは,ヒトSLEとは対照的に,Clq結合性大分子量免疫複合体より成ることを明らかにした。さらに,HPLCゲル濾過によって分子量が100万を越える大分子量免疫複合体であること,およびssDNA-およびdsDNA-セルロースカラムに吸着されたことより,抗DNA抗体によって構成される免疫複合体であることを同定した。しかし,DNaseI処理によってそのClq結合活性が喪失しなかったことから,DNA以外の抗原の関与が想定された。 そこで,本研究では,この大分子量免疫複合体を構成する抗原の同定を試み,陰性荷電物質などの抗原として存在する可能性を検討した。 平成9年度のラミニン,コラーゲン各型,グリコサミノグリカンに引き続いて,平成10年度は脂質の関与について各種フォスフォリパーゼ処理のClq結合活性への影響を検討した。フォスフォリパーゼ処理よるClq結合活性の増減は見られず脂質の関与を示唆する所見は現在のところ得られていない。 さらに,並行して,MRL/lマウス腎を用いてClq結合性免疫複合体およびその構成要素の腎よりの抽出と腎糸球体における同定とを試みた。MRL/lマウス腎より抽出されたIgGは抗DNA活性を示し,またIEFにおいてはcationicであった。しかし,抽出の際,Clq結合性免疫複合体の解離が生じたと想定され,抽出物中における抗原の同定は困難であった。
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