研究概要 |
今年度は抗癌剤治療を行う直前の乳癌患者の臨床材料を用いて、抗癌剤の感受性試験を、研究者らが共同で開発したコラーゲンドロップ法によって検討した。 化学治療法施行前に腫瘍の抗癌剤感受性を知ることは、的確な治療を行う上で非常に重要である。コラーゲンゲルドロップ(CD-DST)法には、初代培養をコラーゲンゲル内で行うことにより、腫瘍細胞が生体内と同様の形態をとりながら3次元的に増殖できるという利点がある。また、抗癌剤の接触条件は、通常の治療において得られるひとAUC(濃度曲線下面積)ら近似し、ヌードマウス法と高い相関関係を示すことが知られている。そこで我々は進行再発乳癌を対象としてCD-DST法の有用性を検討した。【方法】化学治療を施行前に進行再発乳癌患者16例より少量の腫瘍組織を採取し、CD-DST法により腫瘍の抗癌剤感受性を評価した。次に、このCD-DST法の結果と臨床効果との相関を検討した。化学療法としては、CE療法(CPA600mg/m^2+Epirubicin 60mg/m^2,every 3wks,n=11)、TXT療法(Docetaxel 60mg/m^2,every 3wks,n=5)を施行した。【結果】抗癌剤の臨床効果に対するCD-DST法のpositive predictive valueは72.7%(8/11)、negative predictive valueは100%(5/5)、diagnostic accuracyは81.3%(13/16)であった。以上の結果からCD-DST法は進行再発乳癌の抗癌剤感受性の予測に有用であることが示唆された。本法によって治療効率の向上を目指せるものと考える。なおこれらの腫瘍組織中の種々の遺伝子発現についても現在検討中である。
|