研究概要 |
1. 乳癌根治術で得られた乳癌組織に、24時間種々の内分泌療法剤を作用させ、培養組織中の副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)のmRNAの発現量を定量したところ、E2やタモキシフェン(TAM)ではPTHrPの発現量には変化を認めなかったが、MPAでは有意の現象を認めた。PTHrPは骨転移に関与することから、TAMに比べてMPAが骨転移を阻害することが予測された。また本研究が乳癌の薬物療法の治療動果が予測可能であることを明らかにした。 2. 上記の実験系でprogesterone receptor(PR)のmRNAの発現量を定量したところ、ER陽性乳癌組織ではE2、TAMの添加により増加したが、ER陰性乳癌では変化が認められず、PRの発現はERを介して誘導されることを明らかにした。本研究により、乳癌組織を24時間培養することにより、薬剤感受性の予測が可能であることを実証した。またPTHrPの発現量はMPAにより抑制されることから、乳癌組織中にPTHrPの発現量が高く、術後骨転移の可能性が高い症例に対する補助ホルモン療法にはMPAが有用であることを明らかにした。 3. 進行再発乳癌患者16例より少量の腫瘍組織を採取し、コラーゲンドロップ(CD-DST)法により腫瘍の抗癌剤感受性を評価した。次に、このCD-DST法の結果と臨床効果との相関を検討した。化学療法としては、CE療法(CPA600mg/m^2+Epirubicin 60mg/m^2,every 3wks,n=11)、TXT療法(Docetaxel 60mg/m^2,every 3wks,n=5)を施行した。抗癌剤の臨床効果に対するCD-DST法のpositive predictive valueは72.7%(8/11)、negative predictive valueは100%(5/5)、diagnostic accuracyは81.3%(13/16)であった。以上の結果からCD-DST法は進行再発乳癌の抗癌剤感受性の予測に有用であることが示唆された。本法によって再発進行乳癌の治療効率の向上を目指せるものと考える。
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