【目的】 ニューロパシックペインの機構を解明する目的で、皮膚ポリモーダル受容器線維(CPM)のブラジキニン(BK)反応、熱反応におよぼすノルアドレナリン(NA)投与の効果を調べた。 【方法】 健常ラットの下腿および足背部の皮膚を伏在神経とともに剥離した神経-彼膚標本を用いてinvitroを用いた。真皮側を95%O_2-5%CO_2添加Krebs液で還流し、神経槽内で伏在神経の微小神経束から下腿、足背部に受容野を持つCPMからの単一神経放電を記録した。リングで囲み隔離した受容野に対しBK(1-10μM)の1分間投与、またはランプ状の輻射熱刺激を10分間隔で繰り返し、反応が安定したところでNE(1-10μM)の溶液を5分間投与し、それによる誘発放電と投与前後のBK反応、熱反応を比較した。また一部の例ではカテコラミン受容体阻害薬とNEを同時投与した。 【結果】 BKまたは熱刺激を繰り返し投与すると約半数のユニットにNE誘発放電が出現した。またその後のBK′反応は増大、熱反応は減弱した。ところが、α_2受容体阻害薬のヨヒンビン(1-10μM)CH-38083(1-10μM)とNEの混合溶液を投与した場合殆どのユニットに誘発放電はみられず、あっても放電数はNE単独投与の反応に比べて少なかった。一方α_1受容体阻害薬のプラゾシン(1μM)とNEの混合液に対しては反応性を示すユニットが少なくなく、その後のBK反応はNE単独投与の場合と同程度に増大した。 【結論】 以上の結果から、CPMはBKや熱刺激によって感作されるとNEに対し反応性を示すようになり、また反応性が修飾されることが分かった。さらに誘発放電とBK反応の増強にはカテコラミンα_2受容体が関与していることがわかった。
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