研究概要 |
移植腎拒絶反応に関わるT細胞のクロナリティーに関する知見を得るため、バイオプシー試料を用いてT細胞レセプター(TCR)V遺伝子の解析を行い、以下の結果を得た。 解析した6例のバイオプシー試料の内訳は、acute rejection2例,chronic rejection2例,adenovirus infection1例、および陰性対照として解析した移植直後の1hour biopsy1例である.バイオプシー試料および患者PBLからmRNA分離・cDNA合成を行い,anchor-ligation PCR法にてTCR-cDNAを増幅すると同時にbiotin標識した.増幅cDNAを28種のTCRBV-DNAを固定したナイロン膜とハイブリダイズさせ,HRP-streptavidinを介して発色反応に導き,吸光度から各V遺伝子の頻度・偏りを測定した.その結果、acute rejection2例およびchronic rejection1例のバイオプシーにおいて特定のTCRBV遺伝子に偏りが検出された。この偏りはそれぞれの患者PBL中には見られなかったことから、移植腎において、拒絶反応に関与した特定のオリゴクローナル浸潤T細胞がクローン増殖したことを示唆した。他のchronic rejection1例ではTCRに偏りは見られず、ポリクローナルT細胞による拒絶反応の進行を示唆した。陰性対照として解析した1hour biopsy試料では、予想通りTCRに偏りは見られなかった。またadenovirus infection例では、バイオプシー試料およびPBL双方に中程度のTCRの偏りが観察され、この解析からだけでは、拒絶反応とウイルス感染との区別を行うことはできなかった。
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