研究概要 |
移植腎拒絶反応に関わるT細胞の性質を知るため、腎バイオプシー試料に含まれる以下のmRNAの量を測定した。すなわち、浸潤T細胞数全体の指標としてのTCRACおよびTCRBC mRNA、CD4+T/CD8+T細胞数の指標としてのCD4およびCD8 mRNA、TH1/TH2細胞の指標としてのIFN-γおよびIL4mRNAである。RT-PCR法により増幅されたDNA濃度を測定した後、出発材料量の違いを補正するためactin mRNA量で割った値を、上記各mRNA量を表す相対値として用いた。 本年度解析した12例のバイオプシー試料の内訳は、acute rejection5例,chronic rejection3例,および陰性対照として解析した移植直後の1hour biopsy4例である。これらの症例間で上述の各指標について比較した結果、TCRAC、TCRBCに関しては、1hour biopsy群に比較しacute rejection群、chronic rejection群では有意に高く、浸潤T細胞数増加を表していたが、acute rejection群/chronic rejection群間では有意差は検出されなかった。またCD4/CD8、およびIFN-γ/IL4に関しても、acute rejection群/chronic rejection群間では有意差は検出されなかった。これらの結果は、acute rejectionとchronic rejectionでは浸潤T細胞の種類には大きな違いが無いことを示唆している。今後さらに症例数を増やして確認していくことが重要である。
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