移植腎の拒絶反応に関与するT細胞の性質を明らかにする目的で、バイオプシー試料を用いた種々の解析を行い、以下の成果を得た。 1.バイオプシー試料から、精度高くT細胞レセプターβ鎖V遺伝子(TCRBV)の多様性を解析するため、Anchored PCRおよび多数のBV遺伝子とのハイブリダイゼーションを用いた非放射能・微量解析法を開発した。 2.TCRBV遺伝子の解析により、拒絶反応に動員されたT細胞のクロナリティーを把握することが可能となり、特に、免疫抑制剤の投与によるクロナリティーの変動をモニターするのに有効であった。 3.急性拒絶反応と慢性拒絶反応との比較においては、腎浸潤T細胞のクロナリティーに明瞭な差は観察されなかったが、急性拒絶反応の場合、末梢血との差が大きい傾向がみられ、拒絶反応の場に特定のT細胞が集積することが推測された。 4.ウイルス感染の場合も、拒絶反応と類似のクロナリティーを示す症例があり、T細胞クロナリティー解析で両者を区別することは困難であった。 5.慢性拒絶反応にも、急性拒絶反応と同程度に総αβT細胞、CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞の浸潤が観察され、慢性拒絶反応における免疫系細胞の関与が再確認された。 6.IFN-γの検出頻度は、急性拒絶反応と慢性拒絶反応間では有意差が見られず、両拒絶反応とも、Th1型ヘルパーT細胞の関与が存在することが示唆された。 7.IL-4は急性拒絶反応では全く検出されず、慢性拒絶反応においてのみ、約1/3の症例に検出された。慢性拒絶反応には、Th2型ヘルパーT細胞の関与もあることが示唆された。
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