研究概要 |
昨年までの本研究により、神経特異的srcmRNAの発現が神経芽腫患児の予後を予見するbiological markerになりうる事が示され、さらに、RT-PCRを用いることで迅速な臨床応用の可能性が示された。今年度は、NGF(Nerve Growth Factor)の受容体であるtrk Aの発現を併せて解析した。対象は、当教室で切除した神経芽腫60例であり、stage1が24例、stage2Aが4例、stage2Bが7例、stage3が5例、stage4が20例であった。このうち、40例が1歳未満で、32例がマススクリーニング発見例であった。N-myc遺伝子の増幅はstage4の14例に認められた。死亡症例は、12例で、全てstage4であり、このうち9例にN-myc遺伝子の増幅を認めた。神経特異的src、trk A遺伝子の発現を内部コントロールを用いた定量的RT-PCRで定量し、その臨床的意義を検討した。その結果、三種類のsrc mRNAに対するc-srcN2 mRNAの発現比率が、15%を越える腫瘍は、1歳未満・早期症例に集中しており、極めて予後が良好であることが確認された。C-srcN2高発現腫瘍の7年生存率は、93.8%、低発現腫瘍では35.3%であった(x2=24.519,P<0.0001)。また、trk Aの発現を、内部コントロール、β2-microglobulinとの比率で計算したところ、30%を越える腫瘍は、やはり1歳未満・早期症例に集中しており、予後が良好であることが示された。Trk A高発現腫瘍の7年生存率は、91.4%、低発現腫瘍では24.2%であった(x2=25.050,P<0.0001)。また、両遺伝子高発現腫瘍は、7年生存率95.0%、両遺伝子低発現腫瘍は7年生存率21.8%であり、両遺伝子の組み合わせにより、さらに精度の高い予後予測か可能になると思われた。
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