研究概要 |
RT-PCRに必要なprimerをコンピューターを用いてデザインし、合成した。PCRの増幅回数を多段階に設定し、PCR productsが内部コントロール、β2-microglobulinと共に指数的増幅が得られる条件を確定した。また、PCR productsに対して、src cDNAをプローブにSouthen blottingを行ったところ、強いシグナルが得られ、特異性も確認できた。10種類の神経芽腫細胞株ならびに、神経芽腫細胞株RT-BM-1の分化誘導前後の検体、さらに神経芽腫臨床検体28例に対して、3種類のsrc mRNAの発現を、S1 nuclease protection assayとRT-PCRで比較したところ、両実験系はよく相関し、RT-PCRの定量性を確認することができた。trkAの発現に関しても同様にPCRの定量性を確認した。当教室で切除した神経芽腫60例を対象に神経特異的src, trkA遺伝子の発現を定量し、その臨床的意義を検討した。解析症例はstage1が24例、stage2Aが4例、stage2Bが7例、stage3が5例、stage4が20例であった。死亡症例は、12例で、全てstage4であり、このうち9例にN-myc遺伝子の増幅を認めた。その結果、三種類のsrc mRNAに対するc-srcN2 mRNAの発現比率が15%を越える腫瘍は、早期症例に集中しており、極めて予後が良好であることが確認された。c-srcN2高発現腫瘍の7年生存率は、93.8%、低発現腫瘍では35.3%であった(x2=24.519,P<0.0001)。また、trkAの解析結果を加えると、両遺伝子高発現腫瘍は、7年生存率95.0%、両遺伝子低発現腫瘍は7年生存率21.8%であり、両遺伝子の組み合わせにより、さらに精度の高い予後予測が可能になると思われた。
|