研究概要 |
本研究は,歯周病同様に慢性炎症病巣を形成するHelicobacter pyloriのリピドAを用いて,宿主に対する免疫生物学的作用および細胞レベルにおける刺激伝達機構を歯周病の原因金とされるPorphyromonas gingivalisリピドAのそれと比較検討することにより,その構造と機能の共通性について検討した.その結果,本年度に以下の結果を得た. 1)H.pyloriおよびP.gingivalisを微好気的ないし嫌気的条件下で大量培養後菌体を集め,その凍結乾燥菌体から温フェノール/水法,酢酸で加熱処理後,精製リピドA画分を得た.大腸菌およびサルモネラ属菌型の合成リピドA(化合物506および516)は市販品を用い,陽性対照とした. 2)H.pyloriおよびP.gingivalis由来のリピドAによるマウス致死活性,発熱作用,シュワルツマン反応およびリムルステストのいずれの内毒素活性も,化合物506および516のそれらに比較して非常に低毒性であった. 3)免疫生物学的作用として,H.pyloriリピドAのマイトジェン活性は,供試したいずれの系統の異なるマウス脾細胞に対しても活性がみられなかった.P.gingivalisリピドAでは,BALB/c,C3H/HeNおよびC3H/HeJマウスにおいて明確な活性が認められた.化合物506および516では,BALB/c,C3H/HeNマウスにおいて活性があった.サイトカイン産生性では,H.pyloriおよびP.gingivalisリピドAは,低IL/1β,高IL-6で,他方,化合物506および516では高IL-1βおよびIL-6であり,この低IL-1β産生がH.phyoriおよびP.gingivalisリピドAの低毒性に関与していることが推測される。H.pyloriおよびP.gingivalisリピドAの多クローン性B細胞活性化作用,アジュバント作用,非特異的・特異的感染防御作用,ナチュラルキラー細胞活性や特異的腫瘍免疫増強作用については,化合物506および516のそれらと同程度の活性がみられ,低毒性でかつ有用な免疫薬理学的活性を発揮することがわかった.
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