研究概要 |
テロメラーゼは癌細胞の多くでその活性の上昇が報告され,癌との関連が示唆されている.さらに一部の癌ではその病期の進展とテロメラーゼ活性との相関が報告されており,癌の腫瘍マーカーとして注目されている.本研究では,癌化学療法においてテロメラーゼ活性とその治療成績との関係を検索し,テロメラーゼが癌治療における指標となりうるかを検討する.本年度は,(1)口腔粘膜に発生した白板症,および口腔癌におけるテロメラーゼ活性を臨床検体を用いて測定した.(2)A431およびそのシスプラチン耐性細胞株におけるテロメラーゼ活性の比較検討(3)A431およびそのシスプラチン耐性細胞株を植立したヌードマウスにシスプラチン投与後の腫瘍のテロメラーゼ活性の比較検討,を行った。その結果,(1)前癌病変である白板症に対しては,大部分の症例で正常組織のテロメラーゼ活性と変わらない値を示したが,口腔癌においては正常組織に比べて約9割の検体にて高い活性が認められた.(2)当教室にて樹立した子宮頸部ガンA431のシスプラチン耐性細胞株を用いてシスプラチンの感受性とテロメラーゼ活性との関係を検討したところ,親株であるA431細胞株よりもシスプラチン耐性A431細胞株2種(多段階選択法および突然変異法にて樹立)においてより高いテロメラーゼ活性が認められた.(3)シスプラチン耐性細胞株より発症した腫瘍は,シスプラチン投与後も増大傾向を示した.さらにそれら腫瘍細胞のテロメラーゼ活性を測定したところ,親株に比べて耐性株にて著しく高い値が示された.以上のことより,多くの口腔癌においてもテロメラーゼ活性の上昇が認められた.また癌細胞におけるシスプラチン感受性とテロメラーゼ活性との相関が示唆された.
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