ウルソデオキシコール酸結晶を粉砕あるいは噴霧乾燥、溶融急冷することにより得た非晶界質試料の物理化学的性質について検討した。粉末X線回折では各非晶質とも同様なハローパターンを示したが、熱的挙動や固体状態NMR測定の結果には違いが現れ、非晶質の微視的構造には差があるものと考えられた。水蒸気吸着等温線と比表面積との比較から、水分子は非晶質表面への吸着だけでなく内部への吸収が起こっているものと考えられ、また、各非晶質の水蒸気吸着等温線には若干の違いが認められた。しかし、異なる温度で測定した水蒸気吸着等温線からクラウジウス-クラペイロン式を用いて等量微分吸着熱を算出したところ、それぞれの非晶質は同一の吸着熱曲線を示すという興味のある結果が得られた。 クロモグリク酸ナトリウム結晶は90%RHに保存することにより20%以上の水分を吸収する。その水蒸気吸着等温線は緩やかなカーブを描き、脱湿過程では大きなヒステリシスを示した。調湿チャンバーを装備した粉末X線回折により、水和状態の異なる3つの結晶構造が存在することが明らかとなった。クロモグリク酸ナトリウムを2-プロパノールを貧溶媒とする方法で結晶化させることにより多形を得た。この結晶は階段状の水蒸気吸着等温線を示し、各ステップに対応して少なくとも4つの水和状態の異なる結晶形が存在することが明らかとなった。 その他、薬品非晶質の結晶化におよぼす水分の影響、多孔性添加剤への薬品の吸着に及ぼす水分の役割、アミノ酸結晶の粉砕試料の水分吸着特性、直鎖アミロースの密封加熱による複合体形成に及ぼす水分の影響などについて、興味ある知見が得られた。
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