本研究の第一段階として(1)「抑制(身体的拘束)」という行為がICUでどのような状況で実行されているのかという実態把握のための質問紙と(2)ICUで働く看護者が抑制を行使するときの判断の根拠としているものは何か(抑制という具体的状況の中での看護者の判断や行動のプロセス)を分析するための倫理的事例と半構成の質問紙を作成した。作成にあたっては文献検討を行いThmpsonの倫理的判断モデルを参考にした。次にこの事例と質問内容が調査目的を達する上で妥当であるかを検討するために予備調査を行った。対象は申請者が担当する「看護倫理」受講生28名と協力が得られた現在ICUに勤務しているナ-ス5名であった。その結果、倫理を学習した学生の多くは患者の自律(意思)を優先する行動を選択し、現役ナ-スは医療目的を優先する選択をする傾向があること、また事例にはとるべき行動を判断する材料を提示しているにもかかわらず、このやり方しかない、個人的には違う判断をするが職業人としてはこうすべきである、あるいは判断する立場にないと思い込んで行動を選択していることなどが明らかになった。現役ナ-スには職業人としての‘しばり'が強く作用していることが示唆された。ICUでは「救命」が第一の優先目的とされており、看護者の判断を左右している職業意識の背景を探求するための視点が倫理的分析を行う上で不可欠であると考えられた。質問紙の検討にかなりの時間を要したが、現在修正・検討を加えた調査用紙を作成し、当大学付属病院ICUナ-スに対して面接調査を実施中である。今後はこの調査内容の分析に続いて全国調査を実施する予定である。
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