研究概要 |
報告者は1994年、tbという発生初期に神経管が屈曲して脳形成がおこるミュータントをメダカで発見した。本研究の目的とするのは、メダカミュータントの形態がなぜ異常になるのか、を明らかにすることを通じて、脊椎動物の神経管形成に関する基本的な理解を得ることにある。 本年度は初期胚について、野生型とミュータント型を比較しながら、形態形成運動について、主として形態学的に調べた。 まず、正常胚について脳の発生を光学顕微鏡により徹底的に調査した(Fish Biol.J.Medaka,9:17-31.1997)。その結果、脳発生は、嚢胚、神経胚、神経索、神経管、後期胚、稚魚の計6段階に分けて考えられることが判った。次いで、メダカミュータントでは脳の形態形成がどのように変化しているのかを調べた。tbでは最初の段階(嚢胚期)に異常がみられた。tbではこの時期の形態形成運動、とりわけ脊索前板領域での集中が正常胚と比べて遅く、伸展が不十分である事が明らかになった。また、集中過程で細胞の剥落も観察された。このミュータントの表現型は、脳の形成初期における細胞運動の欠陥によるものであると考えられる。また、本年度は、新たなミュータントスクリーンの結果、tb以外の新規の神経管形成異常のメダカミュータントが幾つか得られた(形態的解析はまだ完了していない)。
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