研究概要 |
本研究においては,近年,多くの分野で注目されている人間の高次脳機能,特に言語行動や思考過程が示す個人性やパーソナリティおよびその異常性や障害の客観的・定量的評価の可能性を探り,臨床および工学応用をはかるため,本年度は,以下の5項目の研究を行い,実績を得た。 1.脳内律動活動の個人性抽出法の開発のため,皮質各層と皮質下核との連絡を持つ基本的な神経・シナプス回路を構成して律動波発生機構の解析を行い,単一試行の律動波抽出に必要な基本波形の特徴を求めた。 2.言語・思考過程検査の構造化のため,映像・音声同時呈示による実験課題を,選択的注意を行う有意味・無意味刺激,単文・複文,談話レベルの言語刺激を用いて開発し構造化を行った。 3.個人性の成因のモデル化のため,前頭前野-脳底神経系へのドーパミン,セロトニンなどの神経伝達物質・調節物質の寄与を検討し,言語・思考過程における血中代謝物質から得られる脳内物質,律動活動および言語・思考過程検査の結果により検証した。 4.脳内律動情報収集・処理とデータベース化のため,映像・音声同時呈示による実験課題時の多チャンネル脳波・脳磁図から,律動活動およびP300,N400,Mismatch Negativityの抽出とscalp current density mappingを行った。 5.特徴パタン抽出のアルゴリズム開発のため,ウェーブレット分析をもとに,緩徐波から速波に至る単一試行律動波抽出を行い,同様な分析を言語音声にも適用して,共通の文音声と脳律動情報特徴抽出アルゴリズムの基本部分を作成した。
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