1 社会的公正に関する基礎的な理論枠組みについては、主として社会学・社会心理学の既存研究に基づき、整理を行った。その結果、いわゆる平等・公平が、すべての成員に対して等しい分配・取り扱いをすることを意味するのに対して、公正(特に公正観)は、どのような状況・条件において、何について、等しい分配・取り扱いをするのか、というより包括的内容を含む概念として規定できることが明らかになった。 また、実証研究との関連性については、社会階層論における社会的資源分配論・社会移動論との接合の必要性が明らかになった。社会階層論では、主として資源分配の実態が研究対象になっているが、これに意識レベルでの公正基準を組み合わせた形でモデル構成する必要性がある。さらに、規範理論としての社会契約論は、さまざまな公正基準間の選択において、重要な役割を果たすことが明らかになった。 2 調査データの利用に関しては、これまでに行われた公正観関連調査の結果のデータセットについて、パソコン上で統計解析を行うために、統計解析用ソフトウェア(SPSS)の仕様にあわせたデータの読み込み、変数名・変数ラベル等の添付・コーディング等の整理作業を行い、多変量解析のための準備を行った。 3 実際に理論モデルを実証データに適用する上での、概念的整理・変数の操作化等については、まだ準備段階にとどまっている。資源分配の実態についてのデータと共に、人々の理念としての公正基準を実証データに基づいて明確にする必要がある。来年度の早い時期にこの作業を行い、理論モデルの実証分析を実施する予定である。
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