日本において長い伝統を有し、多方面に影響を与えている漢文訓読語法に焦点をあて、それと比較しつつ、蘭学資料の中に用いられた語法を調査することにより、翻訳語法及び欧文直訳体の形成過程とその特徴を解明していくことがこの研究の目的である。このため、本年度は、以下の1〜4のような調査・研究を行った。 1. 昨年度調査・収集した資料を整理し、補充すべき資料を、書籍・CD-ROMで購入した。 2. パーソナルコンピュータを使い、蘭学資料に関する以下のようなデータベースを作成した。まず、このデータベースには、蘭学資料の名称・編著者・翻訳者・書写/刊行年・所蔵場所・原本についての情報、を入力し、また本文についても、OCRソフトを利用し、部分的な入力を行った。 このデータベースをもとに、今後蘭学資料関係の総合データベースを構築していく予定である。 3. また、漢文訓読資料のテキストデータベース化も試みた。振り仮名・返り点・送り仮名などの情報を正確に記すためにどのように処理していくかが今後の課題として残った。このテキストデータベース作成段階で、江戸時代の漢文訓読資料について再調査の必要が生じたので、東京大学附属図書館等を訪問し、確認作業を行った。 4. 作成したデータベースを利用することにより、江戸時代から明治時代にかけての漢文訓読語法と比較検討し、翻訳語法及び欧文直訳体の形成過程を解明しでいく見通しが得られた。なお、その成果の一部は雑誌論文として発表した。
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