ループ空間におけるオルンシュタイン・ウ-ロンベック過程をパス空間におけるオルンシュタイン・ウ-ロンベック過程を構成する手法に習って構成する際にまず最初に行うべきことはその生成作用素の計算である。 そこでループ空間におけるオルンシュタイン・ウ-ロンベック作用素をループ空間に対応したカメロン・マルチン空間の部分空間の正規直交を用いて無限級数に展開して表現した。この無限級数の和を求めるのに1960年代に小川重義氏によって研究された確率積分の一種のいわゆる小川積分が重要な役割を果たすことが明らかになった。 このループ空間におけるオルンシュタイン・ウ-ロンベック作用素の表現を通常のパス空間におけるオルンシュタイン・ウ-ロンベック作用素と比較してみると多様体の曲率の微分を含んだはるかに複雑な形をしているにもかかわらず、二階の微分の項の係数は有界であり一階の微分の項は高い次数の可積分性を持っていることが明らかになった。このことはループ空間におけるオルンシュタイン・ウ-ロンベック過程の構成に重要な足がかりとなるはずである。 ループ空間あるいはパス空間における解析を更に進めていく上で必要となる道具が今のところ十分に整備されているとはいえない。このような状況の中で最近無限次元空間における対数ソボレフ不等式や等周不等式などが解析を行う道具として脚光を浴びている。今後はこの方面研究にも着目してゆきたい。
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