本研究ではX線励起電流検出を用いることで固体表面の化学状態分析を雰囲気ガス中で行うことを目的とする。平成9年度は以下の2課題に取り組んだ。 1)X線励起電流のパルス検出による放出電子分光 申請者は比例計数管をモデルとした放出電子の検出器を試作し、He+10%メタンの雰囲気中においてX線励起電流をパルスとして検出する事に成功している。試料としてNi箔を用い、Cuターゲットからの特性X線を単色化した条件で励起を行ったところ、Ni吸収端の上下でNiKLLオージェ電子の有無によるスペクトルの変化を観察することができた。 2)薄膜試料からのX線励起電流測定 Si基板上に蒸着した様々な厚さのNi薄膜を試料としてX線励起電流の膜圧依存性の検討を行った。10nm以下の薄膜からの信号を測定するために極微弱電流の測定に取り組み、20fA程度の微弱電流まで測定を実現した。X線励起電流の膜厚依存性を測定し、理論的なモデルに基づいて試料中で発生した電子の減衰長を求めたところ1/eになる距離として12.5nmという値が得られ、実際に表面近傍を測定できていることを明らかにした。また、試料表面を荒らした場合に信号強度の変化が観測されたが、この事も表面の状態にB敏感な測定であることを示している。
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