目的:dominant-negative効果を持つTGF-beta受容体の変異体DNAをアデノウィルスベクターを用いて培養表皮角化細胞に導入し、calcium shift法、活性化Vitamin D3添加による分化誘導時の増殖抑制作用を検討し、分化へのTGF-betaの関与を明らかにする。本年度はアデノウィルスベクターを作成した。材料と方法:TGF-beta受容体の細胞外領域を欠失させ、C末端にHAtagを挿入した変異体cDNAをプラスミドに導入し、E.coliにtranfectさせ大量に培養・精製した。これをコスミドカセットに組み込み、Eco T221制限酵素にてE1領域を切断したアデノウイルスベクターDNA-TPCとともに293細胞にco-transfectした。数日間培養し、homologous recombinationにより変異体DNAが組み込まれたアデノウィルスベクターが数クローン得られた。このクローンをさらに293細胞へ感染させ、大量に培養後超音波処理・塩化セシウム密度勾配法にてウィルスの精製・濃縮を行った。得られたウィルスを各種制限酵素処理にて切断し目的とするcDNAが組み込まれていることを確認した後、PBS/10%glycerolに対して透析、フィルター滅菌後分注し超低温フリーザ-に保存した。得られたウィルスを培養表皮角化細胞に感染させ、24時間培養後細胞を回収し、レクチンビーズで共沈した。このサンプルをSDS-PAGEにかけ、メンブレンに移した後抗HA抗体にてウェスタンブロットを行い、変異体TGF-beta受容体が発現していることを確認した。平成10年度はこのウィルスベクターを用いて、calcium shift法、活性化Vitamin D3添加による分化誘導時の増殖抑制作用を検討し、分化へのTGF-betaの関与を明らかにする予定である。
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