初期発生過程におけるOtx-転写因子間相互作用による遺伝子発現調節機構の総合的理解を目的として、ウニ胚細胞外基質で、反口側外胚葉特異的発現を示すアリルスルファターゼ(Ars)遺伝子の転写活性化をモデル系に選び、以下の研究を本年度行った。 1.Otxと相互作用する因子のcDNAのクローニング・・・・・・Arsの転写活性化には、後期型Otx(OtxL)に加えてそのC末側と第一イントロンC15領域内のOtx認識配列が2回反復した領域の周囲の配列の両方を認識するコファクターが必要であることを明らかにした。この因子をdouble-interaction screen法及びtwo-hybrid法によりクローニングしている。 2.Otx遺伝子の転写調節機構の解析・・・・・・初期型と後期型OtxのmRNAは、単一遺伝子の異なる転写開始点より、alternative splicingにより生じる。OtxLのプロモーターと第1イントロン内のエンハンサー領域を決定した。初期型Otx(OtxE)のプロモーターと2種類のアイソフォームの転写開始点選択機構を解析している。 3.Arsの発生時期・領域特異的転写活性化に影響を及ぼすOtx以外の因子群の解析・・・・・・Arsの発生時期特異的な転写活性化には、転写開始点上流にSOXが結合することが必要で、その近傍にはnegative elementが存在することを明らかにした。また発生領域特異的な発現には、転写開始点上流-1800bpより第2エクソンまでを含む領域をゲノムと同じ順序で配列させることが必要であることを示す結果を得た。領域特異的な発現には、第一イントロン内C15領域のOtx認識配列周囲の領域に結合する因子を必要とする可能性がある。
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