研究設備の検討と鑑賞態度の枠組みの仮説設定。芸術作品に対する鑑賞行動に関して定量的な解析を行うという先行研究はいまだ存在していない。アイカメラを用いた人間の注視点に関する研究はあるが、鑑賞態度の構造を探るには至っていない。従来まで人間の鑑賞行動をどのように入手すればいいかという方法がなかったのである。1年度目には、鑑賞態度の定量的測度が心理学、芸術の分野でどのように考えられどのような解析技術によって定量化が可能であるかについて基盤的枠組み構築を行い、一方でインターネットを用いて動画像による人のイメージ連想の検証実験を行った。まず最初に、平成8年度に筆者らが行った感性工学関連資料における鑑賞態度研究資料の集積とキーワード抽出による各種データベースを用いて人間の画像に対する評価構造に関わる研究フレームの検討を行った。その結果は、(社)日本工学アカデミー主催の学術講演会にて「感性工学の枠組み」として講演した。さらに遠隔鑑賞の基本システムとして、WEB上に動画像を配置しビジュアル鑑賞システムをシミュレートし、質問項目を設けてインターネットに接続しインタテクティブなアンケートをプログラミングし実装した。これにより動画像を遠隔地から鑑賞する実験を実施し遠隔鑑賞によるアンケート回答のデータをサーバーに蓄積した。これらの鑑賞評価データを解析プログラムにより人々の動画像に対する感性的態度モデルを明らかにした。その結果、人の動画像に対する感性評価は並列的処理がなされていることを示す結果が得られた。このうち感性イメージに関する研究成果として論文「感性的情報処理とアイコンによるイメージの抽象化」を平成9年10月日韓国際デザイン学術会議で発表を行い、最優秀論文賞を受賞する成果を上げた。また平成9年度11月開催の日本デザイン学会秋季大会で「感性評価構造モデルのプロトタイプ探索」を口頭発表した。これにより1年次目の研究計画はほぼ充足したと考える。2年次目はこのシステムと鑑賞ロボットとを接続し、人の主体的な鑑賞態度の解明に臨む予定である。
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