研究の目的は、地域あるいは都市の複雑で大規模な活動と交通需要の相互作用を定常性と非定常性双方の視点で検討することであった。本年度は、交通需要と都市地域活動の相互作用を表す構造モデルの開発、交通需要発生のメカニズムと、非定常性の関係把握、交通システムの安定化に対する施策とその協力システムのモデル構築、さらに得られたモデルにおるシミュレーションの実施という研究プロセスの考え方を示すことであった。その結果、複雑系の中で、交通システム計画における創発的現象は、交通渋滞、交通環境汚染、災害や事故等のシステムに現れることを把握した。しかしながら、より詳細な検討は、積雪寒冷地域における冬期交通の円滑な管理と、その協力システムに見ることができ、それについてのシステムモデルと、実際の実証研究が札幌市を中心とした地域で行われた。その結果、冬期交通の円滑なシステムを確保するためには、都市内のロードヒ-ティングシステムが必要であり、広域的システムを考えた場合、膨大な費用が必要となることが分かった。それらの費用を各事業体、熱供給、熱利用及び道路管理の各事業体で出し合うことによって、創発的なシステム構築の可能性が生まれることが分かった。すなわち、各事業体がそれぞれ独自で、それぞれの独自のシステムを作ることより、エネルギーカスケードを考えた利用形態とその責任負担を行うことにより、ほとんど不可能なシステム構築が、実現可能となり、また環境汚染付加軽減効果による間接的な費用を考えることにより、その実現性が加速度的に増加することが分かった。
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