研究概要 |
【目的】イヌ虚血・再灌流モデルを用い、Na+/H+交換系の心筋再灌流障害における意義を明らかにする。【方法】雑種成犬22頭を、Na+/H+交換阻害薬(SM-20550)投与群(SM群)と対照群(C群)各11頭の2群に分け、左冠動脈回旋枝(LCX)を2時間結紮後5時間再灌流した。SM群では、虚血作製10分前にSM-20550を静注後、実験終了まで投与した。血管反応性として、Acetylcholine及びAdenosineを4段階の濃度をかえて冠動脈内に順次投与し局所心筋血流量、冠動脈圧を虚血作製前、再灌流後15分及び5時間で測定した。測定終了後、虚血域(RA)及び梗塞域(IA)の面積を測定した。虚血中心部の心筋切片のMyeloperoxidase活性を測定し、白血球の浸潤を組織学的にも検討した。【結果】Na+/Hl+交換阻害薬投与は、1)再灌流15分後(C群 : 60.5±6.2、SM群 : 78.6±5.3ml/min/100g,P<0.05)及び5時間後(C群 : 47.6±4.2,SM群 : 70.5±7.Oml/min/100g,p<0.01)の局所心筋血流量を保持した。2)AcetylcholineとAdenosine投与時の冠血管拡張反応をいずれの濃度においても保持した。3)梗塞サイズ(IA/RA)を有意に縮小した。4)Myeloperoxidase活性(C群 : 0.84±0.17units/mg protein、SM群 : 0.36±0.12unitsa/mg protein、P<0.01)を抑え、組織学的にも白血球の浸潤を抑制した。 【総括】イヌ虚血・再灌流障害モデルで、Na+/H+交換阻害薬は、白血球の浸潤を抑制しno-reflow現象及び梗塞サイズを軽減させた。 Na+/H+交換系の抑制は心筋虚血・再灌流時の心筋・冠微小血管障害を防止する。
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