本研究の目的は血管内皮細胞由来の新しい細胞外基質蛋白であるdel-1の解析を通じて細胞外基質の細胞分化、形態形成への関与を解明することである。 本研究では心筋および骨格筋への分化能のあることが知られているマウス胎児性癌細胞株P19を使用した。この細胞は多くの研究で使用されており良い実験材料と考えられたが、実際に培養してみるとなかなかうまく分化せず、多方面よりプロトコールの確認をしたり細胞の供与をうけたりして安定した結果を得るのに苦労した。 最初に行った実験は、P19が心筋に分化する際におこる分子生物学的変化を解析することである。特に内因性のdel-1の発現様式は知っておく必要がある。その結果del-1は分化誘導直後から発現し、4日目にその発言のピークを迎えることが解った。この時点は中胚葉のマーカー遺伝子のBrachyury発現のあとであり、心筋のマーカー遺伝子のCsxの発現の開始と時を同じくするものである。このことは我々の予想どうりdel-1が心筋分化に関与している可能性を支持している。 現在、CMVのプロモーターを使用してdel-1遺伝子を強制発現させるP19を作製し、del-1の心筋分化への関与を検討中である。
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