研究概要 |
本研究では、地域の子育て支援を行う祖父母世代における、支援提供による発達心理的影響について明らかにすることを目指した。 まず、中高年期の心理的発達課題である、次世代への関心である「世代性」に着目し、「世代性」を測定するための日本語版心理尺度の作成を目的とした。「世代性」尺度であるLoyola Generativity Scale(McAdams & Aubin, 1992)の日本語訳を作成し、高齢者533名に対して、郵送法による質問紙調査を行った。その結果、「Legacy(遺産)」、「Care(世話)」、「Stagnation(停滞)」の3因子が抽出された。「世代性」と次世代に対する支援行動との関連が示され、「世代性」尺度の妥当性が示された。 また、地域の祖父母世代の子育て支援行動と、祖父母世代の「世代性」および心理的Well-beingの関係を明らかにするため、作成した日本語版世代性尺度を用いて、郵送法による質問紙調査を行った。その結果、支援行動は「世代性」によって高められるが、支援提供による若年世代(親世代・子ども)から受けるフィードバックがポジティブなものでなければ、心理的Well-beingの向上には直接的にはつながらないことが明らかとなった。次世代支援行動は、高齢者の心理的Well-beingに影響することが先行研究で報告されていたが、支援の受け手である次世代からの評価が重要であることが明らかとなった。 地域の子育て支援は、支援を受ける親世代・子どものみならず、支援の提供者である祖父母世代にとっても発達的影響があることが明らかになったこと、さらに、そうしたポジティブな影響を高めるためには、親世代・子どもからポジティブなフィードバックを受けることのできるシステムを支援の中に組み込んでいく必要性が示されたことが、本研究の意義である。
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