社会性昆虫では、たくさんの個体が集合して一つの生活集団(コロニー)を形成し、コロニー内には女王アリや働きアリ、兵隊アリなど、異なる役割を果たす「カースト」が存在し、分業が行われている。このカーストシステムに基づく分業が社会性昆虫の大きな特徴である。しかしながら、社会性昆虫のなかで最も巨大で複雑な社会を構築するシロアリにおいてはどのような遺伝子がそれらの分業システムの構築に関わっているのかはほとんど明らかになっていない。本年度ではまず、オオシロアリの触角における分業に関わる遺伝子の同定を行った。働きアリと兵隊アリの触角を用いたディファレンシャルディスプレーと定量PCRの結果、カースト間で発現量が有意に異なる47遺伝子を同定した。来年度は各遺伝子の機能について解析を行う。また本年度では、ヤマトシロアリにおいて不妊・繁殖カーストへの発生運命決定に関わる遺伝子をトランスクリプトーム解析によって同定するために、カースト運命の決定した卵を交配・単為生殖実験によって採取してそれらのRNAを抽出した。また、ヤマトシロアリのすべてのカーストからmRNAを抽出・逆転写し、第2世代シークエンサーRoche 454 GS titaniumでそれらの全長の塩基配列の決定を行った。来年度は、この塩基配列情報をもとにRNA-seq法によりカースト間のトランスクリプトーム解析を行い、不妊・繁殖カーストへの発生運命決定に関わる遺伝子を同定する。
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