研究概要 |
Pixelated Photon Detector(PPD)は,ガイガーモードで動作し,単光子検出能力を持つ新型の半導体光検出器である.極薄型,常温での低電圧動作など優れた性能を持つPPDは,高エネルギー物理学実験における今後の応用が強く期待されているデバイスである.PPDは今後の開発によって光電子増倍管を凌駕しうる可能性を秘めるが,そのためにはさらなるダイナミックレンジの確保や低ノイズ化が求められる.しかしこれらは高増倍率化・高検出効率化と両立しえないことがPPD開発における課題となっている. 次世代のPPDを開発するにあたって,開発速度の向上と具体的構造の探索を目的として,3次元プロセス・デバイスシミュレータTCADを用いた開発を本格的に開始した.現在までにTCADを用いたデバイスの基本性能を予測するために必須の定常解析では,IV特性とCV特性,およびそれぞれの温度依存性について,実機のPPDの性能を半定量的に再現し,TCADが実用に耐えうることが確認できた.また動的なデバイスの応答を計算する過渡解析を用いた研究も進めている.特にアバランシェ増幅の時間変化を内部の物理現象の時間スケールであるピコ秒オーダーで計算することで,信号の生成過程のうち増倍の発生の機構についてシミュレーションで再現することができるようになった.増倍率を決定する信号生成の全体的な再現のためにはクェンチング抵抗という受光部に接続する素子のシミュレーションが不可欠である.現在この部分の計算においてシミュレータの動作が不安定であり,次年度以降の課題となっている.
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