研究概要 |
本研究の目的は,東アフリカ諸民族の生活圏における通時的,共時的な遊牧生態系をGIS解析すると同時に,家畜の社会的交換系と地域流通網を視野に入れた遊牧社会の人口構造と生業戦略の多様化を家計レベルで分析することにある。 1. 社会文化系の研究成果: 佐藤とワンディバ,そして研究協力者の菊池と菊川が,レンディーレの集落に住み込んでインテンシブな調査を行った。佐藤は,レンディーレ通時的な人口構造を明らかにするために婚姻,出稼ぎ,出生と死亡,医療施設などに関する資料の収集をおこない,多産少死の傾向が認められることを明らかにした。また,女性の婚期を遅延させていた年齢体系の規則が廃止されたことによって,この傾向は促進されると予測される。 家計の調査では,家畜の売却による現金収入のほかに,婚姻後の出稼ぎによる収入の増加が認められたが,従来の社会的交換の比重が強いことが判明した。一方,牧野を去って農業プロジェクトに参加する者が増えてきたが,牧野とは家族関係と氏族関係の点で緊密な連携が計られていた。これは,個々の世帯の経済的多角化の問題として重要な現象である。 2. 遊牧生態系のGIS解析: 安仁屋と伊藤がレンディーレランド,増田,西田,ならびに研究協力者の衣笠がマサイランドをそれぞれ担当した。伊藤は,国立公園の行政資料を収集し,安仁屋は遊牧生態系の基礎資料を収集した。一方,マサイランドにおいては,土地利用の慣行と生態系の基礎資料を収集した。上記のいずれの資料も,GIA解析の予備的作業であり,衛星画像を用いたリモートセンシング解析にステップアップできる準備が整備された。
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