研究概要 |
Rasは互いに一次構造上相同性の見られない多くの因子と相互作用し,活性化する.そこで,それらのターゲット認識・活性化機構の間にどのような共通性や特異性があるのかを明らかにすることをめざした. Raf-1のRas-bindingドメイン(RBD)およびCys-richドメイン(CRD)を含む領域(以下,RBD-CRDと略す)については,大腸菌で大量発現を行い,結晶化を行った.その結果,小さいながらも結晶が得られた.また,脂質修飾を受けたRasについてもSf9細胞より調製し,結晶が得られている.RBD-CRDとGMPPNP結合型ファルネシル化Rasとの共結晶については,未だ結晶は得られていない.今後もひきつづき,検討を行っていきたい. 全長のRaf-1については,大腸菌内において,GroELなどのシャペロンと共発現を行い,得られたものとHsp90/50と混合する,といった操作を行ってみたが,安定なタンパク質を得ることに成功していない.さらに,Hsp90/50や14-3-3を共存させた状態で大腸菌抽出液を用いた無細胞タンパク質合成系を用いた調製を試していきたい. また,Raf-1のRBDに特異的に結合するRNAアプタマーをin vitroセレクション法により人工的に単離した.そして このRNAアプタマーがGST-Raf-1 RBDとRasとの結合を阻害し,その一方,Rasの標的タンパク質であるRGLのRBDとRasとの結合に関しては阻害しないことを確認した.このアプタマーを用いてRaf-1活性化におけるRasの役割をさらに厳密に明らかにしていきたい. また,Rasのシグナル伝達経路の下流に位置する因子であるPOB1(partner of RalBP1)のEH(Eps15 homology)ドメインの水溶液中の立体構造についてNMR法により決定した.
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