組織・時期特異的な遺伝子の転写調節を明らかにする目的で、カイコ後部絹糸腺におけるフィブロイン遺伝子の転写制御の研究を行ってきた。これまでに、本遺伝子の組織特異性を担う因子として精製・クローニングをおこなってきたSGF-2が、種々のタンパク質からなる複合体であることが明らかになっていた。そこで本研究においては、これら因子のそれぞれの機能と複合体としての機能、複合体形成のメカニズムを明らかにする目的で、それぞれの因子をバキュロウイルスを用いて発現させた。発現した因子をそれぞれ精製し、その転写活性や生化学的諸性質を調べた。とくに、これらの因子が機能的な複合体を形成出来るかについて、検討を行った。転写の活性化はこれらの因子で再現されたが、核抽出液から得られる活性に比べると満足出来るものではなかった。またそれぞれの因子間における結合は、強いとは言い難いものであった。従って、これらの因子だけでは後部絹糸腺におけるフィブロイン遺伝子の転写制御を正確に再現出来るものとは言えないと結論された。今後、更に未知の因子の同定をとおして生体内で起きている反応を解析してゆく必要があると思われる。
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