研究課題
基盤研究(A)
重力波検出が可能になれば、重力波そのものの検証ができ、重力波源についてはコンパクト星のダイナミクス、分布などの統計、絶対距離がわかる。重力理論そのものの検証も可能になる。このように物理学的にも天文学的にも重力波の検出は画期的な知見をもたらす。この重力波を直接検出するため、本研究では従来の高感度レーザー干渉計をさらに高感度化することを目的として、鏡を極低温に冷やす技術及びこの技術による熱雑音の低減に関する研究を行った。温度を300Kから30Kに下げることにより熱雑音の振幅は単純にはほぼ3分の1に減る。さらに低温での物性値の向上により現実的には1桁の感度向上が期待できる。鏡は超高真空中に細いファイバーで吊される形式をとるため、低温下に置かれるとそのファイバーによる熱伝導以外には冷却する手だてがないが、通常の金属または溶融石英ファイバーに代えてサファイヤ結晶のファイバーを用いれば、効率的に冷却できることを見出した。また、鏡基材にサファイヤを使用することにより、室温の懸架系と同様な構造を用いて低温でも必要な性能を実現できることを示した。また、大型のレーザー干渉計全体を低温にしない場合、室温部分から局所的に冷却される鏡部分に集積することが予測される汚染物質を定量的に評価し、低温レーザー干渉計の実現性を示した。さらに、鏡の向き調整に用いる低温での駆動系についての研究も進め、現実的な低温レーザー干渉計の動作を実地で示すことができた。以上の成果は、世界的にも最初の低温干渉計に関する実験から生み出されたものであり、本研究計画の当初目標を、実地に熱雑音低減を示すことを除いて、満足するものである。この成果は、2002年4月から開始される特定領域研究において、100m基線長の低温鏡干渉計に適用される。
すべて その他
すべて 文献書誌 (13件)