研究概要 |
小児固形腫瘍,中でも胎児性組織を発生母地とする胎児性腫瘍の分化能分子レベルで明らかにし,その理論を応用して病態の解明,診断・治療法の改善を図るための研究を行い,以下の結果を得た. 1, ヒト胎児性癌細胞の初期分化過程で新たに単離されEATの構造と機能をin vitro,in vivo系で解析した結果,本遺伝子はPEST構造を有し,刺激によって誘導されるとともに,ターンオーバーが速やかであるという性格をもつことが明らかになった.また,in vitroおよびトランスジェニックマウスの系でシスプラチンが誘導するアポトーシスを抑制することが判明した.本分子はミトコンドリア外膜に局在することがら,同部位の破壊によって生じるアポトーシス系を抑制する機能が明確となった. 2, Wilms腫瘍については腫瘍組織,患者の白血球のWT1遺伝子の全exonの塩基配列決定を行い,散発性Wilms腫瘍で今まで明らかにされていない新たな変異を発見した.また,臨床症状などの病態の共通性で規定されてきたFrasier症候群がWTl遺伝子のsplicing isoformの量的不均衡によって生じる疾患群であることを,世界に先駆けて明らかにした.同時に今まで明確でなかった,WTl遺伝子splicing isoformsの器官形成,腫瘍発生機序などの生物学的機能が明らかになった.WT1exon7-10の変異パターンで腎不全の予後,Wilms腫瘍発生の予測可能な遺伝子診断を確立できた. 3, 病理診断が困難なEwing/PNET腫瘍群において,本腫瘍に特異なキメラ遺伝子をRT-PCR法で検出することによって,確定診断を得る方法を確立した.本法は日常検査レベルに至っており,既に50余例の診断を確定した.
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