研究概要 |
1.ヒト胎児性癌細胞の初期分化過程で新たに単離されたEATの個体での機能を明らかにするため,EAT-トランスジェニック(Tg)マウスを作成し,その全身諸臓器を詳細に解析した.その結果,6週令以降Tgでは膵ラ氏島の過形成が認められた.また,糖負荷試験を施行したところ,インシュリン値が高値を示し,この過形成が機能的であることが証明された.これはEATのアポトーシス抑制機能によって,β細胞の過形成が生じたものと考えられる.さらに,初期胚および細胞の分化・成熟へのEATの機能を明らかにするため,Cre-loxPシステムによるES細胞を用いたコンディショナルノックアウトの予備実験が終了した. 2,ウイルムス腫瘍とWT1遺伝子変異 今年度,わが国では初例の家族性ウイルムス腫瘍症例におけるWT1変異を新たに同定した.この変異はのWT1の機能発現に重要な的に重要な部位である。このことは家族性ウイルムス腫瘍の発症に関してもWT1変異が関与していることを明らかにするものである.ウイルムス腫瘍の腫瘍組織およびgermlineに相当する白血球のDNAを抽出しRT-PC法によって,11P15.5に位置するインプリンティング遺伝子H19,IGF2の発現を解析した結果,Drash症候群を含む10例中5例はH19の発現が認められなかった.この結果はウイルムス腫瘍の発生にWT1とともにH19の発現低下が関与していることを示す所見である.75例の小児進行性腎障害症例におけるWT1変異を解析した結果,Drash症候群ではWT1遺伝子の機能に重要な部位のミスセンス変異が同定され、Frasier症候群においては、そのすべてでintron 9 splicing donor siteの点突然変異が認められた。また腎障害単独症例においても、Drash-Frasier両症候群と同様なWT1遺伝子の変異を同定した。これらWT1変異症例の臨床像は、その変異様式によって腎障害の経過、性分化異常の程度、Wilms腫瘍発生の点で異なっていた.
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