研究課題/領域番号 |
10410079
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
棚橋 訓 慶應義塾大学, 文学部, 助教授 (50217098)
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研究分担者 |
栗田 博之 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (30186506)
松井 健 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (50109063)
武井 秀夫 千葉大学, 文学部, 教授 (50226982)
須藤 健一 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (10110082)
松園 万亀雄 東京都立大学, 人文学部, 教授 (00061408)
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キーワード | 性の臨床的現場 / セックス / ジェンダー / セクシュアリティ / 比較民族誌 / 婚外性交渉 / 実践的戦術 / 性言説 |
研究概要 |
本年度は特に「婚外性交渉」(extramarital sexual intercourse)の事例に関する比較民族誌学的研究を基盤に、広く性行動・性意識・性言説を対象とした総合的解析手法(integrated analysis method)の検討を行なった。 今までの人類学における性研究は、婚姻制度の中にある性の議論に偏重してきた。それ故、「婚外性交渉」の存在は「正統化」された「婚内性交渉」との対比のうえに、「制裁の対象」に倭小化された。しかし、「婚外性交渉」は婚姻制度をも一部に包摂するような社会の広がりのなかに展開し、性をめぐる現象が対他的であり社会的なものであらざるを得ないことを最も如実に例示する。ここに「婚外性交渉」から性と社会の関係性を問いなおし、総合的解析手法の構築を試みる所以がある。 「婚外性交渉」を日常世界へとスムーズに埋め込んでいく術を積極的に用意している社会もあれば、「婚外性交渉」を徹底的に否認し、これに対抗する社会制度と言説を盤石の構えで用意している社会もある。前者のような社会では、性と社会の存在がまるで等価であるかのように、婚姻制度を越えた次元で繋がりを見せている。後者のような社会では、「婚外性交渉」は社会制度の高い壁に阻まれるものの、社会制度を「ずらし」あるいは「婚外性交渉」を隠蔽する方法が十全に用意されていたり、社会制度の間隙をくぐり抜ける実践的戦術が日々展開している。何れの場合にも「婚外性交渉」は、性をめぐる制度、言説、実践、感情が激しく拮抗する臨床的現場である。この現場を歴史的・社会的・政治的文脈を踏まえて注視することにより、拮抗により生じる制度の「ほころび」から性の世界が広がり、逆に社会そのものが編制されていく過程が鮮明に示される。
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