研究概要 |
ガラスはその乱れた構造の準安定性ゆえに,構造緩和が生じたり,構造変化を誘起することなどができる.特にカルコゲナイドガラスでは,バンドギャップ光照射による電子励起をとおした光誘起構造変化が顕著に現れることが知られていたが,我々は従来からの予測に反して1995年に,サブバンドギャップ光を用いるとバンドギャップ光の場合より大きな変化をもたらすことを発見した.その結果,「光ガラス細工」と呼び得るような技術,たとえばマイクロレンズなどを光照射のみで製造することが可能になった.しかし,なぜサブバンドギャップ光が顕著な変化をもたらし得るのかは依然として不明のままである.本研究の目的は,このメカニズムの解明にある. 本年度は特に,光強度と光スペクトルを変えて,構造変化と光伝導の関連を調べた.その結果,サブバンドギャップ光であっても,光が強いときは自由キャリヤーができており,これに対応して構造変化が生じていることがわかった.電子と正孔の対では,構造変化は起きにくい.サブバンドギャップ光で自由キャリアーが生成されることは結晶半導体では考えづらいが,バンド裾が広がったアモルファス半導体では有り得ると考えている.このような自由キャリアーの励起がどのように構造変化に結びつくかを調べることが,来年度の課題である.
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