研究概要 |
凍結低温耐性の冬コムギ品糧'Mironovska808'を対象に、低温(4℃)処理後の植物体からcDNAライブラリーを作成し、既知の低温誘導性cNADsをプローブとした分別スクリーニングにより、6種のcDNAsを単離し,4種について解析を行った。1)Wcor14,Wcor35:オオムギクローンBcor14をプローブにWcor14とWcor35を得た。Wcor14の推定アミノ酸配列のN末部分は、Bocr14とコムギの低温・光誘導性Wcs19と高い相同性を示し、コムギゲノムに数コピー存在することが示唆された。これをプローブにcDNAライブラリーをスクリーニングし、塩基置換と欠失を含む相同クローンWcor14bを1個得た。Wcor35は、推定ペプチドのN末部分がWcor14と、C末部分がLEAIIIに属するWcs120と高い相同性を示す新規のキメラクローンであり、コムギゲノムに数コピー存在することが明らかになった。ノーザン分析により、Wcor35は低温で発現誘導され(3-6時間後)、常温で速やかに転写産物が失われること(3時間後)が示されたが、光、乾燥、NaCl、ABAによっては転写誘導されなかった。2)Wrab19:オオムギのABA誘導性クローンHvalをプローブにWrabを得た。Wrabの推定ププチドはLEAIIIに特徴的な11アミノ酸の繰返し配列を4つ持ち、コムギゲノムに12コピー以上存在するファミリーをなすこと、低温とABAで発現誘導を受けることが明らかとなった。3)Waox1:イネのシアン耐性鎖酸化酵素遺伝子RAox1をプローブにコムギのWAox1を得た。WAox1はN末部分を一部欠いた部分クローンであったが、イネ、アラビドプシス、ダイズ等で報告されたAoxと高い相同性を示し,コムギゲノムに数コピー存在すると推定された。
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