研究概要 |
凍結・低温耐性の冬コムギ品種'Mironovska808'から得た4種の低温誘導性cDNAクローンについて解析を継続し、以下の結果を得た。 1.Wcor14.14-13:オオムギの低温・光誘導性クローンcor14をプローブにパンコムギの低温馴化後のcDNAライブラリーからWcor14を得た。Wcor14の推定アミノ酸配列は、cor14と高い相同性を示し、N末端には葉緑体輸送シグナルと考えられる51残基の配列があった。RACE PCRによりパンコムギには少なくとも4種のWcor14の転写産物があること、ゲノムPCRによりイントロンの有無と長さで3種の配列があることが分かった。Wcor14の発現は低温で特異的に誘導された。Wcor14に加えて、推定ペプチドのN側半分がWCOR14と、C側半分がLEA IIIに属するWCS120と高い相同性を示すキメラクローンwcor14-13を得た。ゲノムPCRとRT PCRにより、これに対応する転写可能な配列がパンコムギゲノムに複数存在することが示された。 2.Wrab1,2:オオムギのABA誘導性クローンHvalをプローブにWrab1,2を得た。Wrab1は多コピー遺伝子であること、その推定ププチドはLEA IIIに特徴的な11アミノ酸の繰返し配列を持つこと、低温とABAで発現誘導を受けることが明らかとなった。Wrab2は低温、ABAとともにGA_3で誘導される新規のdhn遺伝子であり、コムギゲノムに3コピー存在することが分かった。ナリテトラ系統を用いたサザン分析により、Wrab2の1つは5A染色体に座乗すると推定された。 3.Wlt10:オオムギクローンpAo86をプローブに、穀類に特異的な低温誘導性遺伝子群blt,rltのコムギ相同クローンWlt10を得た。wlt10の発現は低温特異的であった。 4.Waox:コムギのシアン耐性鎖酸化酵素遺伝子Waoxについて、部分鎖配列に基づくPACE PCRにより全長を決定した。RACE PCRから、5',3'端が異なる複数の転写産物が存在すること、サザン分析からコムギのWaoxは多コピー遺伝子であることが分かった。Waoxは低温で転写産物量が増加した。
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