研究概要 |
糖尿病の病態において、血糖値の上昇が明らかである。この過剰の糖の存在は、血中のその他の成分と酵素的および非酵素的に反応して、種々の生成物へと変化する。特に、蛋白質と反応する蛋白糖化反応はシッフ塩基の生成、アマドリ転位化合物、ストレッカー反応生成物等の複雑な過程を経て、後期反応生成物(adovanced glycation endproducts)を形成して、生体へ様々な影響を与えることが予測されて、糖尿病および合併症や老化現象に関連して、多方面からの研究がなされている。我々は、前記に関連して、アミノ糖類のDNA鎖切断作用について検討し、病態との関連を追求するべく研究して来た。 これまでに、D-glucosamineからの変化中間体であるdihydropyrazine体にその切断活性のあることを明らかにした。別途合成して得た数種のdihydropyrazine体の切断能を確認して、化学構造と切断能との相関関係を検討してきた。昨年度は、DNA鎖切断反応における反応はradical ionの関与があることを推定し、切断反応系内におけるradical ionの検出を試みた。D-Glucosamineを含むアミノ糖(mannosamine,galactosamine)について、切断反応系と同じ条件下、hydroxyl radicalと共にcarbon-centered radical ionの検出に成功した(T.Yamaguchi et.al.,Biol.Pharm.Bull.,21,(3)205-209(1998))。carbon-centered radicalの検出は、すでに公表しているDNA鎖の切断部位特異性のあることの結果を支持するものである。 今年度は、別途合成したdihydropyrazine類からも、D-glucosamineと同様な方法により、水溶液中においてradical ionを発生、特にcarbon-centered radicalを強く発生することを明らかにした(T.Yamaguchi et.al., Tetrahedron Lett.,39,8311-8312,1998)。また、dihydropyrazine類のDNA鎖切断反応との関連が期待される、その化学変化について、新しい発見を報告した(T.Yamaguchi et.al., Tetrahedron,55,675-686,1999)。
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