研究概要 |
我々は、アミノ糖類のDNA鎖切断作用について検討し、糖尿病の病態との関連を追求するべく研究している。これまでに、D-glucosamineからの変化中間体であるdihydropyrazine体が、その切断活性本体であることを明らかにした。このdihydropyrazine類(DHPs)は水溶液中においてradical ion:hydroxyl and carbon-centered radicalを強く発生することを明らかにした。DHPsは非常に反応性が高い(不安定)物質である。したがって、DHPsのDNA鎖切断反応と化学変化との関連が期待されるので、すでに報告(T.Yamaguchi et.al.Heterocycles,51,2305-2309,1999)した化学変化について、さらに継続して検討を進めた。その結果、新しい現象(T.Yamaguchi et.al.Heterocycles,53,1677-1680,2000)を見い出した。この新しい反応を利用する事で、DHPのラベル化合物の合成が可能になり、^<14>C-labeled DHPを得て、ラットを用いて生体内の分布を検討した。その結果、脳、脊髄部への特異的な集積が明かとなった[日本薬学会第121年会(2001年3月)公表予定]。他方、培養細胞へのDHP類の添加実験においては、カスパーゼ依存のアポトーシスが進行することを明らかにした[第23回日本分子生物学会(2000年12月)公表済み]。また、DNA鎖切断作用のreactive speciesがcarbon-centered radicalであることの確証を得るために、さらには、すでに公表しているDNA鎖の切断部位特異性との関連を明らかにするために、Biotin-5′-end-labeledDNAをもちいて、別途合成したDHPsによる切断部位[purine/pyrimidine-guanine(5′-3′)sequences]を明らかにした(N.Kashige,T.Yamaguchi et.al.Biol.Pharm.Bull.23,1281-1286(2000)。 これらの結果を総合するとき、DHPが糖由来の変化生成物であることから、生体内での存在、集積箇所におけるradicalsの発生による生体への攻撃は、人の健康破壊、疾病との関連の可能性が推定される訳である。さらに糖尿病およびその合併症との関連へと進展させてゆく。
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