研究概要 |
我々は、アミノ糖類のDNA鎖切断作用について検討し、糖尿病の病態との関連を追求するべく研究している。これまでに、D-glucosamineからの変化中間体であるdihydropyrazine(DHP)体が、その切断活性本体であることを明らかにし、さらに、このDHP類が、種々と新規の化学反応性を有し、かつまたradicalsを発生する等の諸性質を明らかにしてきた。 DHP類は、6員環のdihydro構造体である。従って、7員環のdihydro構造体であるdihydro-diazepinc(DHDA)にも、このDHP類と同様な諸性質が期待きれた。故に、当研究の新しい進展の一方向として、DHDA体の合成開発を目指した。その結果、新規化合物としての6,7-dihydro-5H-2,3-dimethyl-1,4-diazepine(DHDA-1)の合成に成功した(T.Yamaguchi et al.,Heterocycles,27,11-16,2002)。また、その反応機構を明らかにすることで、DHDA誘導体の新規合成が可能になり、このDHDA-1も、DHPと同様に、DNA鎖切断作用が認められて、当研究の展望に大きな広がりを持った。他方、このDHP類は、生体内で生成され、存在することで、人の健康を害することが予測される。したがって、培養細胞への添加実験に着手している。細胞への効果として、昨年明らかにしたapoptosisの誘導と同時に、細胞分化、細胞周期、細胞接着等の基本的な機能に関る分子の発現に影響を及ぼしていることが判明した(日本分子生物学会、第24回総会、2001.12横浜市、公表)。DHP類のDNA鎖切断活性と化学構造との相関について、phenyl置換基の導入により、より強い切断活性体の合成に成功したこの成果は、活性の強さの尺度として、イオン化ポテンシャル(IP)値を応用する解釈を考案中である(日本薬学会、第122年会 2002.3.千葉市、および第72回日本衛生学会総会、2002.3.三重市、公表予定)。また、このphenyl-DHPを含めて、導入した置換基の違いから生じるradical signalsの変化より、DNA鎖切断作用における反応種の構造について検討した(日本薬学会、第122年会 2002.3.千葉市、公表予定)。
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