研究分担者 |
寺岡 徹 東京農工大学, 農学部, 教授 (60163903)
坂上 寛一 東京農工大学, 農学部, 教授 (10014961)
塩谷 哲夫 東京農工大学, 大学院・農学研究科, 教授 (60226107)
本林 隆 東京農工大学, 農学部, 助手 (20262230)
島田 順 東京農工大学, 農学部, 助教授 (00015124)
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研究概要 |
長期畑作試験圃場では,昨年11月播種のコムギを6月中旬に収穫し,7月初旬より11月上旬まで飼料用トウモロコシを栽培した,両作物の収量をはじめ,窒素吸収量,土壌中残存可給態窒素量,土壌浸透水量などを調査し,有機廃棄物(堆肥)の連用効果を検討した.前年度までに,堆肥単独の施用ではダイズを除き収量が劣ること,および化学肥料との併用が常に多収をもたらすことの確証を得たことから,本年度は,総窒素施用量は変えずに,堆肥区においても総窒素の25%相当量を播種時に化学肥料で施用し,初期生育の促進を図った.その結果,堆肥区における両作物の収量は化学肥料区と同等に高まり,特に飼料用トウモロコシでは化学肥料区よりも多収になる傾向が認められた.したがって,速効性の資材を利用して作物の初期生育を確保すれば,有機廃棄物中心の施肥体系でも化学肥料に匹敵する収量を得られると結論してよいと考えられた.今後さらに有機廃棄物の種類による肥効の遅速を考慮すれば,有機廃棄物施用による初期生育促進も可能となろう. 土壌生物に及ぼす堆肥連用と耕起の影響を調べた結果,自活性線虫は堆肥連用・不耕起の区で多く,化学肥料・耕起区で少なかった.一方,植物寄生性線虫ではこれとは逆の傾向がみられた.また,ダニ類・トビムシ類の密度は堆肥連用区で著しく大きかった.これらのことから,土壌生態系に対する作物栽培のインパクトを堆肥連用が軽減する効果をもつといえる.初期生育を目的に少量の化学肥料を施用した堆肥区でこうした結果が得られたことは,高収量と土壌生態系維持の両立の可能性を示すものと考えられる 土壌残存可給態窒素量と作物収量との間には比較的強い相関が認められた.しかし,他方,堆肥連用区で養分溶脱量が多くなる現象も再確認されている.堆肥連用によって土壌に蓄積された養分をいかに作物の生育パターンに合わせて開放させるかが今後の研究のポイントになると思われる.
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