研究概要 |
睡眠相後退症候群(DSPS)43例、非24時間睡眠覚醒症候群(N-24)22例、不規則型睡眠覚醒パターン1例の計66例の睡眠覚醒障害患者及び正常ボランティア67名より静脈血を採取し、ゲノムDNAを抽出し、SSCP法及びPCR産物の直接シーケンス法によってメラトニン1a受容体、1b受容体の遺伝子変異を検索した。その結果、1a受容体からはR54W,A157Vの2種類、1b受容体からはG24E,L66Fの2種類、計4種類のmissense mutation(アミノ酸配列の置換を伴う核酸配列の変異)を見出した。1a受容体のR54W,1b受容体のG24E,L66F変異はそれぞれnon-conservativeな変異であり、特にR54Wは現在までに単離されたメラトニン受容体遺伝子の全てに共通するアミノ酸に関する変異だった。1a受容体のR54W変異はコントロール群に比べ、N-24群で約3倍の頻度で見出された。それぞれの変異を持つ受容体を培養細胞に発現させ、受容体機能に変化が生じるか調べたところ、R54W変異を導入した1a受容体では受容体発現量が3分の1に減少し、メラトニンへの親和性が上昇していた。これらの結果により、N-24の一部にメラトニン受容体の変異が関与している可能性が示された。現在period遺伝子、Clock遺伝子、BMAL1遺伝子などの生体時計遺伝子についてもゲノム構造の解析を終了して同時進行で変異解析を進めており、既に複数の変異を見出し、疾患との関連を調べているところである。 今後も更に症例数を増やし、生体時計関連遺伝子の変異を包括的に解析し、睡眠覚醒障害と生体時計関連遺伝子の変異との相関関係の全貌を明らかにする。
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