研究概要 |
本研究では分子生物学的手法、細胞工学的手法を駆使し、現在の内科的治療及び外科的治療の限界を超えた重症心不全に対して、心筋修復因子、心筋収縮力増強因子、心筋細胞障害抑制因子、心筋賦活化因子を導入することによって心機能を回復正常化させることを試み、さらに一歩進めて、患者の線維芽細胞から健常な心筋細胞を誘導増殖させることにより心筋片を作製し、これを用いた拒絶反応のない部分心筋移植あるいは心筋片を用いたラッピングによる心収縮力の増強をはかり、末期重症心不全に対する全く新しい治療方法を開発することを目的とする。すでに、小動物(ラット)においてin vivoで心臓全体に遺伝子導入を行い、その発現を確認した(Sawa-Y;et al.JThorac Cardiovasc Surg 1997;113:512-8)。更に機能的蛋白であるHeaatshock protein 70の遺伝子導入を行い、導入後のLangendorff潅流装置にて常温虚血前後の心機能を測定解析し、導入群がcontrol群に比べて、虚血剛性を有していることを報告した(Suzuki-K;Sawa-Y,et al.J-Clin-Invest.1997;99:1645-50)。上記in vivoで遺伝子導入を行った同様のvector、HVJ liposomeを用いて、ラット心筋細胞初代培養系においてin vitro遺伝子導入を行った。HSP70遺伝子導入により、その発現を確認し、低酸素-再酸素化刺激によるcell deathをpreventする効果を確認、学会報告した(1996AHA scientific session)。今回、これらの基礎実験にもとずきbeta2 adrenergic receptor geneをより強力な発現vectorに組換え、導入遺伝子constructを作成した。まず正常心に同constructをHVJ liposome法により、心臓全体にin vivo遺伝子導入を行い、Langendorff潅流装置を用いて、beta adrenergic agonistに対する経時的、用量依存的な反応を確認した。同遺伝子の発現を免疫組織染色にて確認し、さらにbetaadrenergic receptorの細胞膜におけるdensityをligand binding asssayにて測定し、過剰発現を確認した(現在投稿中)。 小動物において不全心モデルを作成した。同modelにてbeta adrenergic receptorの細胞膜におけるdensityが低下していることを確認した後、上記遺伝子のin vivo導入を行い、その遺伝子の過剰発現を確認すると共に、agonistに対する反応性が回復することを確認した(現在投稿中)。
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