研究概要 |
本研究の目的は分子生物学的手法、遺伝子工学的手法を駆使し、現在の内科的治療および外科的治療の限界を超えた重症心不全に対して、心臓手術時の心停止下ならびに補助循環装置装着下において心筋修復因子、心筋収縮力増強因子、心筋細胞障害抑制因子、心筋賦活化因子を導入することによって心機能を回復正常化しうる新しい外科的心不全治療を確立することである。すでに我々は小動物(ラット)においてin vivio で心臓全体に遺伝子導入を行い、機能的蛋白であるHSP70の遺伝子導入を行い、導入後のランゲンドルフ潅流装置にて、常温虚血前後の心機能を測定し、導入群が虚血耐性があることを報告した。(Suzuki-k,Sawa Y et al.J-Clin Invest.1997;99:1645-50)。さらに、ラット心筋細胞初代培養系において HSP70の遺伝子導入を行い、導入後、低酸素-再酸素化刺激によるcell deathを prevent する効果を確認した。これらの基礎実験に基づき beta2 adrenegic receptor gene をより強力な発現ベクターに組み換え導入遺伝子を construct を作成した。まず、正常心に同 cinstruct をを遺伝子導入しランゲンドルフ潅流装置にてbeta2 adrenegic agonist に対する経時的、容量依存的な反応を確認した。同遺伝子の発現を免疫組織染色にて確認し、さらに beta adrenegic receptor の細胞膜における densityを ligand binding assayにて測定し、過剰発現を確認した(Kawahira Y,Sawa Y J Thorac Cardiovasc surg 1999;118:446-451)。さらに不完全モデルにおいて beta adrenergic receptor の細胞膜における density が低下していることを確認した後、上記遺伝子導入を行い、その遺伝子が過剰発現し、agonist に対する反応性が回復することを確認した(Kawahira Y,Sawa Y circulation 1998;98:II262-268)。さらに我々は肝細胞増殖因子(HGF)が心筋細胞は傷害時に C-Met と発現するとともに、HGF の遺伝子導入により心筋細胞は虚血耐性、oxidant stress に対する耐性を獲得した(Ueda H,SawaYAnn Thorac Surg 1999;67:1726-1731)。以上より、新たなる遺伝子治療の導入により心筋虚血などの傷害に対する心筋保護作用を介して、心不全の防止、再生に関与する可能性が示唆された.
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