研究概要 |
肺癌は他の癌に比べると未だに十分な治療成績が得られていない悪性度の高い癌の一つである.この原因の一つは,現在のTNM分類は,形態的分類に.すぎず,癌自体の生物学的悪性度を決定すると考えられる遺伝子異常を何ら考慮に入れていない事である.そこで,我々はこれまで当研究所でクローニングされた癌転移抑制遺伝子MRP-1/CD9,同様な機能を持つと考えられるKAI1/CD82や,癌抑制遺伝子であるp53,及び癌遺伝子であるK-rasについてretrospective studyを行った,その結果K-rasの変異が最も強い予後不良因子であるということが判明した.遺伝子病期分類の組み合わせとしてはK-rasの変異とMRP-1/CD9の減弱の組み合わせが最も予後を推定するにふさわしいと考えられた.しかし,欧米のようにK-rasの変異が40%内外を占めていればこの遺伝子分類は非常に有意義であるが,日本では,K-rasの変異は10%内外に過ぎず,この2者共に異常群は5%に過ぎず,これらによる遺伝子分類はあまり有効でないと考えられた.そこで,多施設共同研究でprospective・studyを行っていき,判定することが重要であると考えられたので、田附興風会医学研究所北野病院,愛知癌センターに加えて,大阪府立成人病センター,和歌山赤十字病院,滋賀県立成人病センターの症例を共同で検討することにした.初年度としては,215例の遺伝子解析を行った.検討した遺伝子は,癌転移抑制遺伝子MRP-1/CD9,KAI1/CD82,p53,K-ras等に加えて,細胞周期関連遺伝子のp16とアポトーシス関連遺伝子のbc1-2である.在、田附興風会医学研究所北野病院,愛知癌センターの2ヵ所で遺伝子解析を行い,その臨床データついては全くブラインドで,来年度末をもってサンプル数を集積し遺伝子解析を終了後,この両者を統計解析する予定である. .
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