研究概要 |
肺癌は他の癌に比べ、外科切除率も20〜30%にすぎず,未だに十分な治療成績が得られていない悪性度の高い癌の一つである.この原因の一つには,現在のTNM分類が,形態的分類にすぎず,癌自体の生物学的悪性度を決定すると考えられる遺伝子異常を,何ら考慮に入れず,切除可能な肺癌を選別できていない事があげられる.そこで,我々はこれまで当研究所でクローニングされた癌転移抑制遺伝子MRP-1/CD9,同様な機能を持つと考えられるKAI1/CD82や,癌抑制遺伝子であるp53,及び癌遺伝子であるK-ras,細胞周期関連遺伝子であるp16,およびアポトーシス関連遺伝子であるbc1-2,baxについて,多施設共同研究を行うことにした.これまでの田附興風会医学研究所北野病院,愛知癌センターに加えて,大阪府立成人病センター,和歌山赤十字病院,滋賀県立成人病センターの症例を共同で検討することにし,この2年間に296例の遺伝子解析を行った.その結果,癌転移抑制遺伝子MRP-1/CD9の異常は,38.5%に見られ,KAI1/CD82の異常は72.9%,p53の変異は36.5%,K-rasの変異は8.8%に,p16は異常は36.2%,bcl-2/baxの異常比を示すものは72.4%であることが判明した.その臨床データついては全くブラインドで,本年度末をもって遺伝子解析を終了後,再発予後との関係を検討し,どのような遺伝子異常が,肺癌の遺伝子ステージングを行っていく上で最も適切であるか,統計解析していく.
|