「自己の他者と相違する諸側面」及び「他者の自己と相違する諸側面」の認知と受容に関する文献的研究を行うと同時に、米国・中国の研究者との意見交換を行った。これにもとづいて、「自己の他者と相違する諸側面」及び「他者の自己と相違する諸側面」の認知と受容を測定するための日本版の調査用具を作成して、小学生・中学生・高校生を対象に、調査を実施した。また、次年度の調査のために、米国版と中国版の調査用紙を作成し、中国版については、既に発送した。加えて、次年度の幼児と小学校低学年児童を対象とする面接調査のために、幼児を対象とする予備的調査を実施し、面接調査用の図版の作成について検討した。 現在、既実施分の調査を分析中であるが、結果の一端を示すと、次のような事実が得られている。 1) 「自己の他者と相違する側面」と「他者の自己と相違する側面」として、身体的特徴、性格、行動的特徴、能力、好悪、考え方、物質的基盤、所属等があげられた。2) 「自己の他者と相違する側面」において、性格よりも、能力や身体的特徴が、より意識されていた。3)発達的には、年長になるに従い、(1)能力や身体的特徴の指摘から性格の指摘へ、他者の自己と相違する側面の受容が容易になる方向へ、変化する。4)日本人においては、「他者の自己と相違する諸側面」の受容の方が「自己の他者と相違する諸側面」の受容よりも容易である。この傾向は、女子において顕著である。すなわち、女子の方が「他者の自己と相違する諸側面」の受容は容易であるが、逆に「自己の他者と相違する諸側面」の受容は困難である。
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