昨年わが国で実施した「自己の他者と相違する諸側面」及び「他者の自己と相違する諸側面」の認知と受容に関する調査を、米国と中国の小学生・中学生・高校生を対象に実施した。現在基礎資料の整理をほぼ終了し、それぞれの文化における発達的変化にとどまらず、たとえば放課後における集団的活動の展開などとの諸関連を明らかにするなど、その規定因の検討を行い、さらに、比較文化的検討へと歩を進めている。最終的な結果ではないが、わが国においては、とりわけ女子において「自己の他者と相違する諸側面」の受容が中国や米国の資料に比較してかなり困難であるのに対して、逆に、「他者の自己と相違する諸側面」の受容については、中国や米国より容易であるなどの結果が得られ、その要因を探究しているところである。 また、自己と異なる特徴を持つ他者として、身体障害者や知的障害者を取り上げた、新たな調査を開発し、わが国の大学生を対象にして実施し、障害者との接触経験がその受容に果たす効果に関する検討を行った。そこでは、単なる接触経験は、必ずしも受容に積極的な貢献をするわけではなく、接触経験の質が重要であり、それが障害者へのイメージを変化させることを介して、障害者の受容に影響することを示唆する資料も得た。そこでは、自己を障害者として想定した場合(すなわち他者と異なる特徴を持つ自己の受容)の結果をも収集し、両場面の比較検討を進めているが、前述した一般的調査結果とほぼ同様な傾向が示されている。
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